黙示録の四騎士の元ネタは聖書?アーサー王伝説との二層構造を解説

『黙示録の四騎士』というタイトルを見て、聖書のあの四騎士だ、と思った人は多いんじゃないでしょうか。私も最初は完全にそう思っていました。
ただ、調べていくと話はもう少し込み入っています。作者の鈴木央先生がインタビューで出発点として語っているのは、聖書ではなくアーサー王伝説なんですね。かといって聖書と無関係なわけでもなく、タイトルも四人という数も厄災のイメージも『ヨハネの黙示録』6章とぴたりと重なります。
この記事では、聖書側とアーサー王伝説側を別々のレイヤーに分けて整理していきます。ネットでよく見かける「聖書の四騎士は戦争・飢餓・疫病・死」という説明が原典と少しずれている点にも、きちんと触れていきますね。
ネタバレは、四騎士のメンバーの名前とアーサーが敵側にいることまで。最新巻の核心や結末には踏み込みません。

- 元ネタが聖書とアーサー王伝説の二層になっている理由
- ヨハネの黙示録6章の四騎手と「飢餓」が指しているもの
- 「戦争・飢餓・疫病・死」という定番の説明のどこがずれているか
- 四騎士の名前やキャメロットに伝説がどう使われているか
黙示録の四騎士の元ネタは聖書なのか
まずは「元ネタは何か」という問いそのものを分解します。ここを整理すると、ネット上の説明が食い違って見える理由も見えてきますよ。
元ネタは聖書と伝説の二層で読むのが正確

結論から言うと、この作品の元ネタはひとつに絞れません。聖書の『ヨハネの黙示録』に出てくる四騎手と、中世から語り継がれてきたアーサー王伝説。この二つが別々の層として重なっています。
ここで大事なのが、二つの根拠のレベルが違うという点。
アーサー王伝説のほうは、作者本人がインタビューで「自分なりのアーサー王伝説を描きたかった」と語っています。つまり作者の明言です。一方の聖書は、作者が「タイトルを黙示録から取った」と直接語った資料を、私は今回見つけられませんでした。
ただし作品名・四人組・厄災という三点が原典と重なりすぎているので、聖書のモチーフを取り込んでいると考えるのが自然かなと思います。あくまで原典との対応関係であって、作者の証言ではない。ここを分けておくと話がすっきりします。
タイトルの由来はヨハネの黙示録6章

聖書側の該当箇所は『ヨハネの黙示録』の6章ですね。子羊が七つの封印を順に解いていく場面で、最初の四つの封印から四人の騎手が現れます。
米国カトリック司教協議会が公開している聖書本文(USCCB版・黙示録6章)を実際に読むと、順番はこうなっています。白い馬に乗り弓と冠を持つ者、赤い馬に乗り大きな剣を与えられた者、黒い馬に乗り秤を手にした者、そして青白い馬に乗る「死」と名づけられた者。
四人組で、名前ではなく厄災を背負っていて、世界の終わりに向かって走り出す。作品タイトルとの対応は、こうして並べるとかなりはっきりしますね。
キリスト教のモチーフを大胆に作品へ持ち込む漫画は他にもあって、悪魔と天使の対立をそのまま物語の骨にした例としては、黒執事に登場する天使の正体を整理した記事も参考になるかと思います。
とはいえ、繰り返しになりますが「作者が黙示録から取ったと言った」わけではありません。作品側の言葉としては確認できていない。ここは正直に書いておきますね。
作者が出発点と明言したアーサー王伝説

では作者が語っているのは何かというと、アーサー王伝説のほうです。
鈴木央先生は2021年6月のインタビュー(MANTANWEB)で、自分なりのアーサー王伝説を描きたかったことが出発点だったと説明しています。さらに、アーサー王伝説は作家ごとに内容が違うのだから、モチーフを使って自由に描けばいい、という趣旨のことも話しているんですね。
この「作家ごとに違う」という認識が、けっこう効いています。忠実に再現する気がそもそもない、と本人が言っているようなものですから。
前作『七つの大罪』の1巻でも、作者コメントとして「アーサー王伝説の鈴木央的前日譚」という文脈が語られていました。講談社のプレスリリースでも触れられている話です。つまり『七つの大罪』の時点から、アーサー王伝説は構想の芯にあったわけですね。
『黙示録の四騎士』は、その芯がいよいよ本編に入ってきた作品と見るのが自然かなと思います。
聖書の四騎士と飢餓が意味するもの
ここからは聖書側だけを取り出して見ていきます。「飢餓」という言葉がどこから来ているのか、原典を開くとはっきり分かりますよ。
飢餓を背負うのは黒い馬に乗る第三の騎手

フォーカスされることの多い「飢餓」は、三番目の騎手が担当しています。
黙示録6章5節から6節。第三の封印が解かれると、黒い馬が現れます。その騎手が手にしているのは剣でも弓でもなく、秤(はかり)でした。
USCCB版の注釈では、この黒い馬は飢饉(famine)の象徴だと明記されています。そして秤については、食糧が不足して価格が跳ね上がる状況を表すものだと説明されているんですね。
戦いの道具ではなく、量りの道具。ここが妙に生々しくて、個人的にいちばんぞっとする騎手かもしれません。剣で殺すのではなく、値段で殺すわけですから。
四騎手を並べると、こういう構図になります。
| 封印 | 馬の色 | 持ち物・特徴 | USCCB注釈での象徴 |
|---|---|---|---|
| 第一 | 白 | 弓と冠を与えられ勝利へ進む | 征服する力 |
| 第二 | 赤 | 地上から平和を奪う大きな剣 | 血なまぐさい戦争 |
| 第三 | 黒 | 秤を手にする | 飢饉(食糧不足と物価高騰) |
| 第四 | 青白い | 「死」と名づけられ陰府が従う | 死そのもの |
「飢餓」という言葉が聖書由来だという説明は、この第三の騎手を指しているわけですね。ここは原典で確認できるので、安心して使える情報かなと思います。
戦争・飢餓・疫病・死という説明は正確か

さて、ここからが少しややこしい話です。
ネット上では「聖書の四騎士は戦争・飢餓・疫病・死」という説明をよく見かけますよね。私も長いことそう覚えていました。ところが原典と注釈にあたると、この四点セットはきれいには対応していません。
USCCB版の注釈が整理しているのは、征服する力・戦争・飢饉・死の四つです。「疫病」は独立した騎手として立てられていません。
では疫病はどこに出てくるかというと、6章8節。第四の騎手である「死」に与えられた権威の説明として、剣・飢饉・疫病・地の獣によって殺す、という形で並べられています。つまり疫病は四番目の騎手がもたらす災厄のひとつという位置づけなんですね。
ややこしいのは、翻訳や解釈の伝統によって呼び方に幅があること。白い馬を「侵略」と訳す資料もあれば、キリストの象徴と読む立場もあります。だから一概に間違いと切り捨てられるものでもないんですが、少なくとも「これが唯一の正解」とは言えない、くらいの温度感で扱うのがよさそうです。
色つきの馬はゼカリヤ書にも登場する

もうひとつ、あまり語られない話を。
色のついた馬が世界を巡るというイメージは、実は『ヨハネの黙示録』の発明ではありません。旧約聖書の『ゼカリヤ書』6章に、すでに似た光景が出てきます。
二つの青銅の山のあいだから四台の戦車が現れ、それぞれ赤・黒・白・まだらの馬に引かれている。天使はこれを「天の四方の風」と説明します。USCCB版の注釈は、この四色の馬が全世界を意味することを述べたうえで、参照先として黙示録6章2節から8節を挙げているんですね。
神話や終末のイメージを作品名に取り込む手つきは現代の漫画でもよく見られて、北欧神話の終末を続編のタイトルに据えた例として俺だけレベルアップな件のラグナロクを整理した記事もあります。
元ネタを一段さかのぼると、こういう層の重なりが見えてくる。この作品を読むときの態度としても、たぶん同じ姿勢が役に立つはずです。
四騎士の名前に残るアーサー王伝説
今度は伝説側です。作品の固有名詞を並べていくと、こちらの層の濃さがよく分かりますよ。
四騎士のメンバー4人と名前の由来

作中の〈黙示録の四騎士〉は、パーシバル、ランスロット、トリスタン、ガウェインの4人です。アニメ公式の追加キャスト発表で、パーシバルに続く3人としてこの名前が明示されています。
この4つ、どこかで見た並びだと思いませんか。そう、すべてアーサー王物語に登場する騎士の名前です。
大英図書館がまとめている中世アーサー王物語の解説でも、Arthur、Camelot、Lancelot、Gawain、Guinevere、Perceval、Round Table といった名前が伝承の中核として挙げられています。作品側の固有名詞が、そのまま伝説から持ってこられているわけですね。
| 作品の名前 | アーサー王伝説での立ち位置 | 確認できる範囲 |
|---|---|---|
| パーシバル | 聖杯探索の物語で知られる騎士 | 伝承側は大英図書館の解説で確認 |
| ランスロット | 湖の騎士。王妃との関係で有名 | 同上 |
| トリスタン | 「トリスタンとイゾルデ」の主人公 | 同上 |
| ガウェイン | アーサーの甥として語られる騎士 | 同上 |
| アーサー | エクスカリバーを抜いた王 | 作品では王として登場(週マガ公式) |
| キャメロット | アーサー王の宮廷が置かれた地 | 作品では国名として登場 |
読者の間では「円卓の騎士のなかから4人が選ばれている」という見方も広く語られています。考察系のブログでは定番の切り口ですね。
ただし注意点がひとつ。アーサー王伝説には決まったひとつの正典がありません。時代や作者によって円卓の騎士の顔ぶれも人数も変わります。だから「伝説ではこうなのに作品では違う」という比べ方は、そもそもあまり意味をなさないんです。
アーサーとキャメロットが敵側にいる理由

本作でいちばん驚かれるのが、アーサーの立ち位置かもしれません。
週刊少年マガジンの公式作品紹介によると、パーシバルは〈黙示録の四騎士〉の一人であり、キャメロット国王であるアーサーはその四騎士を抹殺しようとする側にいます。伝説では理想の王として語られる人物が、こちらでは対立軸の中心に置かれているわけですね。
これも「伝説を裏切った」というより、伝説の使い方の問題かなと思います。アーサー王物語そのものが、王国の栄光と崩壊をセットで描いてきた話ですから。理想の王が最後には国を失う、というのは伝説のほうにもともとある筋です。
ちなみにファンタジー作品で敵の中心に置かれた存在をどう描くかという点では、葬送のフリーレンの魔王の正体を追った記事の視点とも比べてみると面白いかもしれません。
なお、アーサーの内面や動機の掘り下げは本編の核心に触れる部分なので、この記事ではここまでにしておきます。
伝説の設定はどこまで作品に使われたか

では、伝説の設定はどのくらい持ち込まれているのか。
答えは「名前と関係性のレベルでは濃く、物語の筋としては別物」です。
作者本人が「伝説は作家ごとに違うから自由に描く」という趣旨を語っている以上、原典の再現を目指した作品ではありません。伝説から素材を借りて、まったく別の物語を組み立てていると考えるのが実態に近いはずです。
読者の間では、パーシバルは聖杯を探す騎士、ランスロットは湖の騎士、ガウェインは太陽が高いほど力が増す騎士、といった伝説側の特徴と作品を重ねて読む楽しみ方も定着しています。こういう読み方ができるのは、作者が名前を借りるだけで終わらせていないからでしょうね。
逆に言うと、伝説を知らなくても物語は普通に読めます。知っていると二度おいしい、くらいの設計でしょうか。
元ネタを踏まえて原作を読み直すなら

最後に、実際に読み返すときの話をします。元ネタを知ってから戻ると、序盤の見え方がけっこう変わりますよ。
厄災の設定を追うなら何巻から読むか

元ネタ目線で読み直すなら、素直に第1話からがおすすめです。
マガポケの公式ページによると、第1話「少年は旅立つ」の配信開始は2021年1月27日。指の骨みたいな山の上で祖父と暮らしていた少年が、外の世界へ出ていくところから物語が始まります。
ここが元ネタ的にはけっこう重要で、パーシバルは最初から「四騎士の一人」として登場するわけではないんですね。聖杯を探す若者が、旅の途中で自分の役割を知っていく。アーサー王伝説のパーシバル像と、聖書の四騎手という枠組みが、少しずつ重なっていく作りになっています。
厄災のラベルそのものは、作中でもきちんと言葉として出てきますよ。たとえばマガポケの公式話タイトルにある、第125話「〈戦争〉の騎士」(2023年10月18日配信)。話数タイトルに山括弧つきで厄災が置かれているので、作品世界の用語として厄災が使われていることは公式ページからも読み取れますね。
四騎士の顔ぶれが動き出すあたりでは、第84話「時代の変わり目」(2022年11月9日配信)といったタイトルも並びます。このへんから物語の温度が一段変わる印象でした。
ただ、ひとつ正直に書いておきますね。「パーシバルが〈死〉、ランスロットが〈戦争〉、トリスタンが〈疫病〉、ガウェインが〈飢餓〉」という対応についてです。
読者の間ではこの割り振りが完全に定着しているのですが、公式サイトの公開ページだけで4組すべてを確認することはできませんでした。人物ごとの厄災を確かめたいなら、原作本文を当たるのが確実かなと思います。
逆に言えば、そこが読む楽しみでもあるんですよね。誰がどの厄災を背負っているのか、どのタイミングでそれが明かされるのか。ネットのまとめで結論だけ知ってしまうより、本編で拾っていくほうが断然面白いはずです。
刊行状況も見ておきましょう。講談社の公式作品ページによると、2026年8月時点で単行本は27巻まで刊行済み。28巻は2026年9月16日発売予定と案内されています。連載も継続中なので、最新の状況は公式ページで確認してみてください。
27巻というのは、追いかけようと思うとなかなかの分量です。紙で揃えると本棚も一段まるごと持っていかれますし、途中の巻だけ抜けて買い直す、みたいなことも起きがちですよね。
そのあたりをまとめて片づけたいときに便利なのが電子書籍で、ブックライブで読める黙示録の四騎士なら1巻から続けて追いかけられます。元ネタを頭に入れた状態で序盤を読み返すと、パーシバルの旅立ちの意味がまるで違って見えてくるはず。
アニメから入って原作が気になった人も、序盤を読み直したい人も、入口は同じでいいと思います。最新巻まで揃う電子書籍版の既刊を確認しておけば、どこまで追えばアニメの先へ行けるかも把握しやすいですよ。価格や無料で読める範囲は変わるので、最新の条件は各サービスの公式ページでご確認くださいね。
アニメと原作で確認できる範囲の違い

元ネタを調べるときに地味に大事なのが、どの媒体の情報かという点です。
まず名前から。原作漫画は『黙示録の四騎士』ですが、TVアニメの正式名称は『七つの大罪 黙示録の四騎士』ですね。アニメ公式サイトでも『七つの大罪』の続編譚として、原作は鈴木央先生の週刊少年マガジン連載作品だと明示されています。
四騎士のメンバー4人については、アニメ公式のキャスト発表で確認できます。ただしアニメ公式で分かるのはあくまでアニメの情報なので、原作本文の細かい設定までアニメだけで断定するのは避けたいところ。
この記事で扱った情報を、根拠のレベル別に整理するとこうなります。
| 内容 | 根拠のレベル | 確認元 |
|---|---|---|
| 作者はアーサー王伝説を出発点にした | 作者本人の発言 | 2021年6月のインタビュー |
| 四騎士は4人(パーシバルほか) | 公式発表 | アニメ公式のキャスト情報 |
| アーサーは四騎士と対立する立場 | 掲載誌の公式紹介 | 週刊少年マガジン公式 |
| 作中に〈戦争〉等の厄災ラベルがある | 公式の話タイトル | マガポケ第125話 |
| タイトルは聖書の四騎手に対応 | 原典比較(作者の明言なし) | 黙示録6章1〜8節 |
| 黒い馬=飢饉、秤=食糧不足と高騰 | 宗教原典と注釈 | USCCB版の注釈 |
| 人物ごとの厄災の割り当て | 読者間で共有される見方 | 考察サイト・ファンの整理 |
こうして並べると、どこまでが確定でどこからが推測なのかが一目で分かりますよね。元ネタ系の話題は断定的な書き方が飛び交いやすいので、こういう線引きを持っておくと振り回されずに済むんじゃないでしょうか。
黙示録の四騎士の元ネタに関するよくある質問

Q1. 元ネタは聖書とアーサー王伝説のどちらですか?
A. どちらか一方ではなく、二層で重なっていると考えるのがいちばん正確です。作者が構想の出発点として明言しているのはアーサー王伝説のほうで、聖書については作品名・四人組・厄災という強い対応関係が確認できます。
Q2. 聖書の四騎士に「疫病」の騎士はいないのですか?
A. 独立した騎手としては立てられていません。USCCB版の注釈が整理しているのは征服する力・戦争・飢饉・死の四つで、疫病は6章8節で第四の騎手「死」がもたらす災厄のひとつとして並べられています。
Q3. ガウェインが〈飢餓〉というのは公式設定ですか?
A. 読者の間ではこの対応が広く共有されていますが、公式サイトの公開ページだけで4人分すべてを確認することはできませんでした。人物ごとの厄災を確かめたい場合は、原作本文を読むのが確実です。
Q4. アーサー王伝説を知らないと楽しめませんか?
A. 前提知識がなくても問題なく読めます。アーサー王伝説には決まったひとつの正典がなく、作者自身も伝説は作家ごとに違うという趣旨を語っているので、原典を知らないと分からない仕掛けにはなっていません。
黙示録の四騎士の元ネタを整理して読み直す

最後に要点をまとめておきますね。
『黙示録の四騎士』というタイトルは、聖書の『ヨハネの黙示録』6章に現れる四騎手を連想させます。四人組で、それぞれ厄災を背負っていて、終わりへ向かって走り出す。この対応はかなりはっきりしていて、「飢餓」が黒い馬の騎手に由来することも原典で確認できました。
一方で、人物名や関係性にはアーサー王伝説のモチーフが多く使われています。パーシバル、ランスロット、トリスタン、ガウェイン、アーサー、キャメロット。しかも作者が構想の出発点として明言しているのは、こちらのほうでした。
つまり原典をそのまま再現した物語ではなく、複数の伝承を漫画独自に再構成した作品として読むのが適切かなと思います。「元ネタは聖書です」と一言で片づけると、作者が語っている部分がまるごと抜け落ちてしまいますからね。
この二層構造を頭に入れてから、元ネタを意識して読み直す電子版で第1話に戻ると、少年が旅立つあの場面の意味がかなり変わって見えるはずです。そこからが本当のスタートかもしれません。


